心を奪われたクリスタルの清澄。2012/13秋冬 プレタポルテ コレクション ショーの舞台となったグラン パレには、ゆったりとしたやわらかな雰囲気のなか、私たちを圧倒する壮大なセットがしつらえられていました。砂糖や雪のように輝き、無垢な光を放つフロアからそそり立つのは、ダークパープルやホワイト、クリア、またはグレーに染まって輝く大きなクリスタルの森です。巨大な鉱物による幻想の世界。この静謐な、未知なる光景は、シャネルのジュエリーの伝統を讃えるもので、繊細で鋭いシャネルの遊び心と同じくらい魅惑的です。やはりクリスタルには、心に強く訴える力があるのです。
コレクションの象徴はクリスタル。トルクネックレス、コートのラペル、ツイードドレス、ピーター フィリップスによる素晴らしいメークアップ―そしてルサージュによる刺繍が施されたアイブロウ。クリスタルは、まるで光の魔法により現れた神秘の結晶のよう。原子によって構成される結晶のなかで、原子をモチーフとした規則的なパターンが繰り返し登場します。
この秋のシャネルのシルエットは、とても刺激的でスタイリッシュ。小さい頭部を強調するように艶やかな髪を後ろでまとめたヘアスタイル。強烈な印象をプラスするのは、アシンメトリーなレザーサンダルや、クリスタルが散りばめられたプレキシガラスのヒール、そして身体にぴったりフィットするパンツや肌をさらに魅力的に見せる華やかなレギンスです。
あらゆる形で表現されるシャネルの魅力が観客を魅了します。ストリートスタイルは、ツイードのパーカーに施された刺繍やその巧みなカッティングにより生まれ変わり、圧倒的な女性らしさを醸し出しています。コレクションに息づく哲学はレイヤード。ひときわ洗練されたボタン留めのパンツとツイードジャケットに合わせたフレアスカート。この3つの組み合わせは、光沢のあるツイードドレスの上にきらびやかなショートコートを羽織ったスタイルや、モスグリーンの主張のあるレギンスに、アメジストカラーのジャケットとバイアスボタンのスカートを組み合わせたスタイルなど、様々なバリエーションに置き換えられています。なかでも、トープカラー(赤鈍色)のレースを重ねたパンツとドレス、クロップドジャケットを合わせたカジュアルなアンサンブルはとても印象的でした。
旬のアクセサリーはフード。オーバーサイズで華麗に、または小さなクリスタルを刺繍するなど、遊び心にあふれるスタイルは変幻自在です。フードは、都市のリズムに合わせて躍動する現代のフェミニティーを伝えています。シャネルが表現する女性は、その時代の複雑さやスピードに常に歩調を合わせているのです。
かつては子供たちや修道僧、ラッパーのものだったフードは、頭を隠すだけでなく、顔を保護しながらも、その魅力を引き立たせています。
控えめな秋のトーンの羽根飾りが、上品な襟元、コートやエンブロイダリージャケットの肩に彩りを添えています。
モデルたちは両手をポケットに入れ、背中をベルトで留めた華麗で重厚なツイードコートを、シャネルならではのカジュアルなスタイルで着こなしています。鮮やかなステッチのアメジストカラーやエメラルドカラーのジーンズが、グレーや白で彩られたツイードパンツと好対照をなし、抗しがたい魅力を放っています。ゆったりとしたチェーンニット、そして大胆なモザイクプリントのスカーフ。突如、冬の少女がシンプルなピュアブラックのドレスで登場します。首にアンスラサイトカラー(無煙炭色)のアクセサリーをつけている様子はこのうえなく優美で、詩の中の光景のようです。
今回のコレクション ショーで特徴的だったのは、ふんだんに取り入れられていた壮麗なジュエリー。幾重にも重なる、クリスタルがはめ込まれたメタルバングル。トルコ石や、嵐の空のような色彩のジェムストーンでアクセントをつけたビブネックレス。そしてクリスタルを散りばめた1970年代風の幾何学的なネックレス。まるで、鉱物にフェミニンな魔法をかけたかのようです。
バックステージの写真(撮影: ブノワ ペヴェレリ)